research

研究内容

ラバーバンドを使って筆で感覚の実験を行っている写真

痛みのリハビリの可能性を広げるために
研究を進めています

  • 幻肢痛

    VRを使用した
    新しいリハビリテーション法の開発

    体肢切断後や腕神経叢損傷後に、感覚がないはずの体肢に痛みが生じる現象を「幻肢痛」と呼びます。この幻肢痛に対する新しいリハビリテーションの開発と、痛みを引き起こす神経メカニズムの解明に取り組んでいます。

    具体的には、VR(バーチャルリアリティ)を使用して、患者さんの脳に幻肢が動いているという錯覚を与え、その結果、痛みが軽減するかどうかを調べています。幻肢痛は患者さんごとに痛みの感じ方や場所が異なるため、脳を動かすことで痛みを和らげる方法を研究しています。

    VRをしている人
    VRに写っている画面

    こんな機器を使用しています

    VRをつけて手で何かをつかもうとしてる人

    幻肢痛VRリハビリテーション(デジタルミラーセラピー、株式会社KIDS)

    株式会社KIDSと共同で開発した先進的なリハビリテーション機器です。
    この装置は、VR(仮想現実)技術を活用し、視覚的に認識できるようにすることで、実際には動かない幻肢を動かしているかのような体験ができ、痛みの軽減を目指します。
    幻肢を動かす感覚を再現する鏡療法をVRで実現した装置です。

    VR開発者の思い

    猪俣 一則氏の写真

    株式会社 KIDS代表猪俣 一則

    私は腕神経損傷による幻肢痛を持つ当事者です。先生方の尽力で命を救われ、いつか医療に恩返ししたいと思っていました。
    仕事で活用していたVR技術が医療に役立つと気づき、これは私がやるべきと使命を感じ開発を進めました。

    当事者が臨床研究に関わることで原因究明や予防法の考案を加速させ、苦しむ当事者たちを少しでも早く助けたいです。多くの患者さんの痛みが緩和し、笑顔で楽しい生活を送れることを願っています。

    株式会社 KIDSのサイトを見る
  • 脳卒中の後に起こる痛み

    痛みの予後予測とリハビリ計画の最適化

    脳卒中後に生じる痛みのリハビリテーション予後を明確にするため、痛みの性質や脳画像を分析する研究を行っています。脳卒中後の痛みの特性を理解することが、効果的なリハビリテーションの開発に繋がります。

    この情報をもとに、患者さん一人ひとりに最適なリハビリ計画を立て、よりよい回復をサポートすることを目指しています。

    痛みの性質で予後を予測するための実験結果のグラフと脳画像
  • 脊髄損傷の後に起こる痛み

    神経障害性疼痛と脳機能の変化

    脊髄損傷後に現れる神経障害性疼痛は、脳の機能的な異常によって悪化することがあります。この研究では、脳の異常がリハビリテーションによってどのように変化するかを解明し、痛みの軽減に役立つ方法を探っています。

    具体的には、アロディニア(痛くないはずの刺激でも痛みを感じる現象)を誘発する脳波と安静時脳波を解析し、脳の働きと痛みの関係を明らかにしています。これにより、脊髄損傷後の疼痛管理における新しいアプローチを導き出すことを目指しています。

    脳波を測る機械をつけているところの写真
    安静時の脳波の図

    こんな機器を使用しています

    脳波の機械をつけた人

    多チャンネル脳波計(64ch,BiosemiActiveTwosystem,株式会社バイオセミジャパン)

    人間の脳の神経活動を詳細に調べるための測定機器です。
    この装置には64個の電極が備わっており、それぞれの電極にはジェルを使用して、脳の微細な電気信号を正確に捉えることができます。
    この脳波計を用いて、安静時の脳波活動、体性感覚誘発電位、視覚誘発電位などを記録しています。

  • 生体信号で痛みを予測する

    手術後の痛みを事前に予測し、
    最適なリハビリの支援につなげる

    整形外科の手術後、痛みが長引くことがあります。この痛みを事前に予測できれば、適切なリハビリテーションや治療計画を立てやすくなります。当研究室では、手術後の痛みの予後を予測するため、脳波や心電図などの生体信号を活用した研究を進めています。

    • 脳波データを活用:脳の活動パターンを分析し、痛みの持続可能性を評価します。
    • 心電図データを活用:自律神経の反応を調べ、痛みの予後を予測します。

    これにより、患者さん一人ひとりに適したリハビリテーションを提供し、術後の回復をサポートすることを目指しています。

    脳波データのグラフと心電図データから予後を予測するイメージ図
  • ヒトを対象にした
    痛みの基礎研究

    痛みと機能回復に向けた基礎研究

    痛みを抱える患者さんの観察や研究データをもとに仮説を立て、その仮説を詳しく検証するための基礎研究を行っています。具体的には、痛みによって影響を受ける運動機能や注意力の問題を取り上げ、それらを改善する新しいリハビリテーション法の開発を目指しています。

    実際の研究例

    痛みを再現するための装置を用いて、動くと電気刺激が与えられる状況を作り出し、痛みによる行動変化を調査しました。この研究では、被験者が動くことを恐れ、動作が遅くなったり、筋肉に過剰な力が入ったりする反応が観察されています。

    大学院生は、これらのデータを分析することで、痛みが行動や身体にどのような影響を与えるのかを明らかにし、より効果的なリハビリテーションの開発に取り組んでいました。